2008年のビットコイン白書で引用された初期開発者の一人、アダム・バック氏は、規制の明確化や機関投資家の参入拡大が進む中でも、ビットコインの価格変動は典型的な範囲内であると指摘した。
マイアミビーチで開催されたiConnectionsカンファレンスにおいて、バック氏は「ビットコインは本質的にボラティリティが高い」と述べた。「過去4年周期の市場サイクルを振り返ると、この時期は価格が下落しやすい局面であることが分かっている」と続けた。
また、同氏は市場参加者の取引行動について、「ファンダメンタルズに基づく動きではなく歴史的なパターンに沿った売買が行われている可能性がある」との見解を示し、「投資家層の違いによって市場の動きも異なるだろう。ゆえに年後半には価格が回復すると考える人も多いのではないか」と述べた。
今年は、ワシントンで暗号資産に好意的な政権が誕生し、現物ETFを巡る規制の明確化も進んだことから、機関投資家のさらなる参入が期待されていた。
多くの投資家にとって、これらの動きはビットコインの価値保存手段としての有効性を試す重要な指標となっていた。特に、米国の大幅な財政赤字やドルの購買力低下が懸念される中、デジタル資産であるビットコインはそれらの課題に対抗する希少性や独立性を持つとされてきた。
しかし、市場は期待通りには動いておらず、政策環境が支援材料となったにもかかわらず、ビットコインの価格は過去1年間で約26%下落している。多くの局面では、ビットコインは他のリスク資産と連動して取引され、マクロ経済の不確実性から独立していない様子も見受けられる。
一方、伝統的な安全資産である金は史上最高値を更新し、銀も数年ぶりの高値をつけるなど、インフレや地政学リスクを受けて資金が流入している。一部の資金はデジタル資産よりも貴金属市場への逃避を選んだと見られる。
バック氏は、自身がCEOを務めるBlockstreamおよびBitcoin Standard Treasury Company(BSTR)を通じて、ビットコインの保有者構成にも言及した。「ETFの保有者はリテールのビットコイン取引トレーダーに比べて投資の粘着性が高い」と説明。リテールは上昇局面で多くの資金を投入する半面、下落局面での投資余力は限られる。一方、機関投資家はポートフォリオ内で資産配分を調整できるため、より安定的な保有が可能だと述べた。
しかし、機関投資家の参入はまだ初期段階にとどまっているという。「巨大な資金プールが市場に本格的に流入しているとは考えていない」と釘を刺した。
主要な規制上の障壁が解消され、明確なルールのもとで資金流入が促進される可能性があるにも関わらず、市場への本格的な参加は進んでいないとの見方を示した。
長期的には、普及の進展に伴いボラティリティは低下するとバック氏は考えている。現状の局面を、初期の高成長銘柄に例え、「例えば初期のAmazon株は市場の不確実性から価格変動が激しかった」と述べた。
さらに、「急速な採用の過程自体がボラティリティを生む」と指摘。そして、普及が成熟し、より多くの機関や企業、国家がビットコインにエクスポージャーを持つことで、価格変動は徐々に穏やかになるだろうと語った。ボラティリティが完全になくなるとは考えていないが、金に近い値動きの安定性を目指せるとした。
バック氏はまた、ビットコインの将来的な価値の尺度として金の時価総額と比較する考えを示し、現時点ではビットコインの時価総額が金より約10~15倍小さい規模であることを踏まえ、「価値保存手段としてシェアを取り続ける限り、成長の余地がある」と述べた。
短期的な価格の変動にもかかわらず、同氏はビットコインの長期投資仮説には変わりがないと強調し、「過去10年でビットコインは他の資産クラスよりも高い年率リターンを示してきた」と述べた。
バック氏にとって、ビットコインのボラティリティはその本質と矛盾するものではなく、むしろ普及過程に伴う不可避の特徴だ。「ボラティリティはビットコイン全体の姿の一部に過ぎない」と結んだ。
