暗号資産ハードウェアウォレットの大手メーカーLedgerは、新たにスマートフォンに近い外観と機能を備えたデバイス「Ledger Atom」を開発中であることを発表した。2027年中頃の発売を予定している。
従来のウォレットがデジタル資産の保護を最優先し、引き出しや保管を前提とした最小限の機能にとどまっていたのに対し、AtomはAndroidを搭載し、WhatsAppやInstagram、TikTokなどの日常的なアプリをインストール可能だ。ユーザーは通常のスマートフォン機能と、デジタル資産管理のためのセキュアモードを切り替えて利用できる。また、AIアシスタントのOpenClawとも連携している。
製造はLedgerのベトナム工場で行われ、同社の従来製品と同様の生産体制が整えられる見込みだ。
この発表は、マレーシアの販売代理店CryptoBilisに関連するサプライチェーンのセキュリティ侵害の直後に行われた。この事件では攻撃者が顧客に届く前にデバイスを改ざんしたとされ、Onchainの調査によると300台以上のウォレットで最大9,320万ドルの損失が推定されている。盗難に絡み、テザーのドル連動型ステーブルコインUSDTでは1,000万ドルが凍結された。
改ざんされたウォレットには、利用者の24語のリカバリーフレーズを画面からの信号で傍受可能な隠しチップが組み込まれていたとのことだ。この被害は主に東南アジアのユーザーに限定され、Ledgerはヨーロッパでの資金損失報告はないと発表している。
Ledgerの広報はCoinDeskに対し、Atomにはこれらの攻撃に対応するための追加保護機能が搭載されると説明した。具体的には、デバイスの最も重要な部品を覆う保護ケース、画面や背面カバーの取り外しを検知するセンサー、開封状況が分かるパッケージデザインなどが挙げられる。不正改変検知システムは、電源がオフの状態でも動作するため独自バッテリーを備えるという。
広報担当者は「コア保護ケースにより、今回の事件のような画面リーダーの埋め込みが明確に防止される」と述べた。
LedgerはAtomを第三者の販売を通さず、自社サイトでのみ販売する計画を示しており、これによりCryptoBilis事件で問題となった流通経路への露出を理論上抑制できると期待している。
同社は現時点で事件の影響を受けた既存顧客向けの下取りプログラム導入を予定していないが、将来的なアップグレード促進施策の可能性を否定してはいない。
スマートフォン機能とハードウェアレベルの暗号資産セキュリティを融合させる構想自体は新しいものではない。2023年にはSolanaがプライベートキーのハードウェア保護を特徴とするSagaスマートフォンを発表し、前年には後継機種Seekerを投入している。Ledgerのアプローチは、暗号資産セキュリティデバイスを起点に日常使いのスマートフォンに変えていくという逆向きの方法を採っている点が特徴だ。
