SpaceXは公開市場において最大規模のビットコイン保有を示し、事業モデルではなく財務準備資産としてビットコインを保有する企業の新たな枠組みを提示した。初の決算サイクルでは、ベアマーケットの環境下において企業の暗号資産戦略の実力が問われることになる。
SpaceXのナスダック上場は金曜日に行われたが、記録的な750億ドルもの資金調達規模よりもむしろ静かな話題を呼んだ。これは史上最大規模のIPOに連動して約1万8,712ビットコインが公開市場に登場し、これまでになかった大手企業によるビットコイン保有の実例となったためだ。
同社のS-1申請書によると、SpaceXは約6億6100万ドル相当で購入し、2023年3月31日時点で時価約12億9000万ドルと評価されたビットコイン1万8,712枚を保有している。この保有は余剰資金を活用した戦略的準備資産として位置付けられている。
注目すべきは、SpaceXがビットコインを事業の中核とせず、ロケットや衛星、人工知能分野の企業でありつつも、現金資産の一部としてビットコインを保有している点だ。上場により、この決定が公開投資家にも明確に提示された。
この体制は、従来の大口ビットコイン保有企業とは一線を画している。たとえばStrategyはビットコインを積極的に取得し、その株価はビットコイン価格の代理指標的に機能している。一方、BitMineのような準備金運用型の証券化ビークルは、資金を集めて暗号資産を購入し、株価と保有資産価値の差異で事業継続が左右される構造だ。
しかしSpaceXはその流れとは逆の構造を採用している。Elon Musk率いる評価額1.8兆ドル超の巨大企業の中で、ビットコインはわずかな規模に過ぎず、株式市場での商取引もほぼ発生しない。しかし、専業ビークルにはない形でこの資産を標準化している。
オンチェーンの解析者の間では長らくSpaceXが約8,300ビットコインを保有すると見られてきたが、実際にはそれをはるかに上回る量であることがS-1で明かされた。世界で最も厳しく監査されるプライベート企業の一つが10億ドル規模のビットコインを保有していたことが正式に証券開示で判明し、従来の推測は半分程度の正確さだったことになる。
このビットコイン保有は現在、公開企業の会計基準に従って管理されている。公正価値会計に基づき、SpaceXは四半期ごとにビットコインを時価評価し、取引の有無に関わらず損益を計上しなければならない。テスラではこの方法で減損損失を計上し、ビットコインを売却せずに数億ドルの含み損を抱えている。
SpaceXのビットコインは2024年1月の最高値から37%下落しているものの、約3万5,000ドルでの取得価格から見ると購入時点で約80%の上昇を記録している。
TeslaもSpaceXも共にElon Musk所有の企業であり、両社ともビットコイン売買には消極的な姿勢を保っている。いずれの企業も決算発表やアナリストの質疑応答が続く中でビットコインを保有し続け、ビットコインが準備資産として巨大企業の貸借対照表に組み込まれる実例を示している。これにより決算における価格変動の雑音を吸収して次段階へと進んでいる。
もしSpaceXがポジションの一部を売却したり切り離して市場価格の変動リスクを軽減すれば、この実例は逆転し、企業金融にビットコインを組み込む根拠となる最重要の参照ケースを失うことになる。
一方で、SpaceXの力強いIPOデビューはOpenAIやAnthropicの上場に対しても肯定的なサインとして受け止められている。
これら企業やその他大規模発行体がビットコインをバランスシートに載せるかは、SpaceXのビットコイン準備資産が最初の四半期にどれだけの損益ノイズを生むかにかかっている可能性がある。
企業によるビットコイン保有については熱狂的な支持者や専業ビークルが存在していたものの、単なるビットコイン保有を示す大規模な公開企業はこれまで存在しなかった。そして、その実験が金曜日にようやく始まった。
